中国の習近平国家主席を4月に国賓として招く政府の方針に対し、疑問視する声が自民党の一部議員だけでなく、野党からも相次いでいる。背景には、中国共産党による一党独裁の下、少数民族弾圧や尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺で船舶による挑発行為を強める習指導部への批判がある。野党は今後の国会論戦で、国賓として招く方針を維持する安倍晋三首相を厳しく追及していく構えだ。
「『国賓待遇』で接遇することによって、世界に対して、中国の覇権主義、国際法や民主主義の基本的価値やルールに反する行動を容認するといった誤ったメッセージを送ることになりませんか」
国民民主党の玉木雄一郎代表は22日、首相の施政方針演説に対する衆院本会議での代表質問で、中国公船による領海侵入や新疆ウイグル自治区での人権問題など懸念を列挙して、首相にこう迫った。
共産党の山下芳生副委員長も24日の参院本会議の代表質問で香港問題に触れ、「弾圧が中国の最高指導部の承認と指示のもとに行われていることは、きわめて重大」と指摘した。国賓待遇の是非には直接、論及しなかったものの、共産党関係者は「もろ手を挙げて歓迎できる状況にはない」と言い切る。
立憲民主党の枝野幸男代表は12日のNHK番組で、「国賓としてお招きするのに、『いかがなものか』という声が国内外にあることについて、私は十分理解する」と述べた。
習氏の国賓待遇については、自民党の保守系有志議員グループ「日本の尊厳と国益を護(まも)る会」(代表幹事・青山繁晴参院議員)が昨年来、異議を唱えていた。ただ、自民党幹部らはおおむね首相方針を支持しており、反対は限定的とみられていた。
日本政府は4月上旬の複数の日程案を基に、習氏の訪日日程を中国政府と調整している。国賓待遇に対する野党批判については「在日中国大使館も気にしている」(日中外交筋)といい、今後の国会論戦で野党が批判を強めれば、習氏の国賓待遇への反発が一気に拡大する可能性もある。
習氏の外国訪問は国際会議への出席を除けば、国賓待遇が原則だ。米国との貿易対立が長期化する中、対日関係を重視する中国政府にとって、習氏の訪日は「成功」以外の結果は許されない。
一方、首相も関係改善が進む日中関係を「新時代」と位置づけ、厳しさを増す東アジア情勢を踏まえて習氏の国賓待遇に理解を得たい考えだ。習氏の国賓待遇を歓迎しないムードが広がりつつある現状に首相がどう対応するのかが焦点となる。(原川貴郎)
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